私たちはエゾナキウサギの保護とその天然記念物、絶滅危惧種への指定を求めて活動している団体です。

私たちは、現在北海道および北海道開発局によって建設が進められている道道静内中札内線(日高横断道路)の建設工事の中止を強く求めます。

道道静内中札内線は、日高山脈の原始の自然を破壊する不要の公共事業であるとして、すでに多くの国民や自然保護団体から批判を浴びています。特に北海道開発局が工事を担当している「開発道路」の部分は、面積において日本最大の国定公園であるばかりでなく手つかずの自然が残る原生流域の広さでも日本一を誇る日高山脈襟裳国定公園の心臓部を貫く道路ですが、そこにはヒグマが生息し、ナキウサギの生息地も広範に認められています(北海道「野生動物分布等実態報告書」 1991年)。

氷河時代の遺存種であるエゾナキウサギは、「その地史的、生態的側面だけから見ても学術的に貴重な動物」でありながら、「その分布は相互に孤立分散しており、加えて近年地域的には生息情報が減少するなど絶滅が懸念されている地域もみられて」います(北海道・前述)。ナキウサギは環境に適応する生理的な能力が低く、また移動、分散する能力も低いので、仮に道路建設によって生息地が分断されたり環境が変化したりすると、その個体群を維持していくことが困難になることが予想されます。本来手厚く保護されるべきナキウサギの生息地をこのように大規模な工事で破壊することは、日本の自然にとって重大な損失になるでしょう。

私たちは今秋二回にわたって、札内川上流の静中トンネル建設予定地周辺のナキウサギ生息地を調査し、予定地の周辺一帯にナキウサギが生息していることを確認しました。ナキウサギ研究の第一人者である小島望氏も、そのナキウサギ調査報告書(別途添付)において、北海道開発局が行ったナキウサギ調査は、1 調査方法が不備で調査精度も低いこと、2 生息範囲が過小評価されていること、 3 実際にはトンネル坑口予定地により近接した地点にナキウサギ生息地があるという問題点を指摘すると同時に、静中トンネルの建設はエゾナキウサギに多大な影響を与えることは明白であると指摘されています。開発局がこのようなおざなりで恣意的な調査に基づいてナキウサギの生息には影響がないとして工事を強行するのは重大な誤りです。

北海道の堀知事は現在本道路建設について年内中に見直しをする旨表明しておられますが、北海道開発局におかれましても貴重な自然に対して取り返しのつかない結果をもたらす前に一日も早く中止を表明されることを要望いたします。

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