野生生物のすむ森づくりという視点から、次期基本計画に意見を言わせてもらいます。
1 野生動物のすむ豊かな天然林の理想から遠ざかりつつある道有林
道有林は、平成14年に政策を大きく転換し、森林のもつ公益性を全面的に重視するようになりました。
しかし、道有林では、この5年間で44件もの違法伐採(皆伐)が繰り返されていました。このままでは、やせこけた林しか残らないのではないかという危惧を、私立ち自然保護団体のみならず、多くの市民が抱いていると思います。
野生動物に食料と住みかを提供する森という基本計画の理念も、施業計画に反映されず実際に施業する職員や業者の意識にはありません。
私たちが調査したとき、ある伐採現場では、倒木のすぐ脇にクマゲラの採餌痕のある木がありました。また、すでに皆伐された現場では、幹の中がウロになっていたり腐れが入っている木が少なくとも50本前後切られていて、その中には、ウロの中にアリの巣(ヒグマの食料)ができている木や、クマゲラの採餌木が複数本ありました。クマゲラの採餌痕のある太いトドに伐採予定のマークが何本もつけられている現場もありました。
ヒグマやリスに木の実を提供するツルも、材としての木の成長しか考えない昔ながらの施業の延長で、根本から切られていることがほとんどです。このように、実際の伐採では野生動物に対する配慮は全くされていないのです。
また、環境省が絶滅危惧種として指定しているテングコウモリ、コテングコウモリ、ヒメホオヒゲコウモリ、チチブコウモリなどの生息、繁殖が確認されている地域の森でも、皆伐がなされていました。これらのコウモリは樹洞性なので、伐採によって生息に大きな影響を与えたことになります。
さらに種の保存法によって国内希少野生動植物主として指定されているクマタカ、オオタカも生息繁殖している地域でも、皆伐を含めて広範囲の伐採が行われました。
さらに、えりも町の道有林152林班52小班では、2004年11月、人工林間伐のために集材路を新設する際に、ナキウサギ生息地である岩場(2003年6月に生息を確認)の上部を切り崩し、このため、崩された岩や土砂で岩場の大半が覆われ、岩と岩の隙間がほとんどない状態になりました。
ナキウサギは、子育て、食料保存、天敵からの避難、日差しの回避のために、岩と岩の間の隙間を利用します。このため岩が堆積し隙間があるガレ場でしか生息できないのです。隙間が埋められることは、生息地の破壊です。
野生動物のすみかを、提供するどころか奪っているのが今の道有林の実態なのです。
2 豊かな森をつくるために(提案)
クマゲラについては,「巣を中心とする周囲の住みかの範囲は伐採せず」「トドマツで胸高直径が40cm〜50cm程度となると,不朽が進み,アリが巣を作るようになるので給餌木として残すよう配慮をする」と具体的な施業の仕方も明記している。
以上