私たちは、昨年、小坂文部科学大臣に、エゾナキウサギの天然記念物指定について要望しその署名4万3433筆を手渡した団体です。
その後、貴庁から北海道教育委員会(以下、道教委)に対してなされた問い合わせに対して、道教委からの回答が昨年12月8日付でなされていますが、この回答は下記、説明及び添付しました内容の新聞報道と抗議文に記載したとおり、事実を捏造した回答ですから、無効というべきものです。
したがって、仮にこの回答を元に貴庁が判断され、それを小坂大臣に伝えられたとすると、それは虚偽の報告となります。
どうか、道教委に事情を確認された上、再度、調査を求められるようにお願いいたします。その際には、短時間で回答を求めるのではなく、時間をかけて市町村の真意が正しく反映されるよう、配慮いただきたくお願いします。
また、貴庁が、道教委の調査、回答を重視されることに対しては、ナキウサギ生息地のある市町村住民の意向は、何より「署名」によって表明されているということを申し添えます。私たちが提出した署名用紙の「署名者の住所地」を確認していただければそのことは明らかです。
また、ナキウサギの天然記念物は一部、地元だけが判断するものではありません。判断にあたっては、国民の声、4万3000人を超える国民の声をまず何よりも重視していただくことを要望します。
さらに、道教委は、下記のとおり保護管理の責任を負えないことを指定に対して消極的である理由としています。そこで、野生動物が天然記念物指定されたときの自治体の法的義務の内容をできるだけ具体的にお知らせください。そして、その根拠もお知らせください。
以上につきまして、早急に対処いただくようお願いします。
また、質問に対する回答は、お忙しいところ恐縮ですが、9月末日までに回答をお送りくださいますようお願いいたします。
記
一 北海道教育委員会の回答の問題点
1 9月9日付道新報道で明らかになったこと
- 問い合わせはわずか10市町村のみを対象
- 重要な生息地のある鹿追町や上士幌町その他の多くの市町村に問い合わせをしていない。
- 電話による調査
- その電話に出た担当者の受け答えを市町村の回答としたが、新得町(さらに東川町)のように町長、教育長が調査そのものを知らなかった例もある。
2 9月12日付道新報道で明らかになったこと
@ 町の意見の捏造
- 否定的とされた東川町では、逆にむしろ指定を大きく望んでいることが判明。
- 「あんなことは言っていないはずだ。天然記念物指定のことなど知らなかった。できるだけ保護しようというのが町の立場。指定されるなら、むしろ大歓迎だ。」
- (道教委の意向調査に対し、「保護していく考えはない」と回答したことになっている『東川町』の三宅教育長の言葉)
A 町からも不信をもたれる回答内容
- このほかに、保護する考えはないと回答したとされている『夕張市』『新得町』『置戸町』『上川町』は、「いつだれがどう答えたかわからない」(夕張)「そういう表現をしたつもりはない」(置戸)と調査内容に不信の念を示している。これでは、他の『様似町』『美瑛町』『上富良野町』『南富良野』『日高町』の回答も正しくなされたのかどうか疑問である。
3 9月11日、私たちが道教委と話し合って明らかになったこと
@ 道教委が、エゾナキウサギが非常に貴重で保護の必要があると考え、
- また、天然保護区などで保護されるのは、ナキウサギ生息地の一部に過ぎないことを認めていることを確認できたことはよかったと思っている。しかし、以下の問題は大きい。
A 生息地を把握していない
- 現在、道教委はナキウサギ生息地のある市町村名を、正確には把握していないどころか、一部の地名しか挙げることができない。北海道は1991年にナキウサギ調査報告書を出しているから、市町村名は容易にわかる。対象不明なままなされた地元の意向調査なるものは、前提を欠いていてこの点からも無効である。
B 道教委があげる『指定が難しい理由』
T 地権者の同意を得る必要がある。
- 私たちの、「生息地は国有林、道有林内にあるから、国と北海道の同意で充分だ。反対はありえない。」という指摘に対して、道教委は、「民有地があるかもしれないので、その地権者の同意が必要。」と主張した。
- 民有地があるかどうかは、調査は容易である。道教委は、不明なことを反対の口実とせずに、直ちに民有地の有無を調べるべきである。
U 地元の声がない
- そもそも多くの署名者の意思を無視し、地元の意向を捏造したのであるから、これは理由にならない。
- 私たちが道教委に行ったときは、捏造の事実は知らなかったので、道教委に対して、いったいどれだけの地元の意向が必要かを質問したところ、「一つで十分だ」と回答した。東川町は大歓迎と言っている事実を道教委は無視したことになる。
V 指定されると保護管理団体として道が保護の責任を負う必要があるが無理であると主張。
- しかし、具体的にどのような責任があるかは不明であり文化庁に問い合わせることもしていない。
天然記念物に指定し、貴重であり保護の必要があることを国と自治体が啓蒙、アピールしていく中で、具体的に保護に必要なことを検討していけばいいと、私たちは考える。
二 添付書類
- 1 北海道新聞(コピー)
- 2006年9月8日朝刊、一面の記事
- 2 北海道新聞(コピー)
- 2006年9月9日朝刊、十勝版の記事
- 3 北海道新聞(コピー)
- 2006年9月12日夕刊、一面の記事
- 4 道教委宛の抗議文(2006年9月11日)
- 5 北海道知事宛の要望書(2006年9月11日)