私たちは、1995年以来、エゾナキウサギの保護と天然記念物の指定を目指して活動している団体です。(現在、全国の会員数2661名)。
昨年11月、私たちは小坂文部科学大臣にお会いし、エゾナキウサギの天然記念物指定を求める4万3433筆の署名用紙を手渡し、指定を要望しました。
エゾナキウサギの天然記念物指定を求める声は、現在は、道内はもちろん全国の自然を愛する人々の共通の願いとなっています。
氷河期の生き残りであるエゾナキウサギは、北海道の歴史の生き証人であると同時に、貯食行動や鳴き声によるコミュニケーションなど独特の生態をもつことから、地史的にも学術的にもたいへん貴重な生きものです。
また、風穴や高山植物が多く見られる「ガレ場」という特殊な環境でしか生息できず、環境の変化にも極めて弱いため、その保護の必要が極めて高いことは周知の事実であり、高橋知事や吉田北海道教育委員会教育長も、道議会における答弁等で認めておられる事実です。
エゾナキウサギの生息地は、その一部は、大雪山の「天然保護区域」や天然記念物として保護されていますが、高山帯の一部だけを保護するのでは充分ではありません。低い標高にある生息地も保護しなければ生息地が孤立していき、遺伝子交流が妨げられて遺伝子の多様性が失われ、種は絶滅しやすくなります。
その一例が夕張岳・芦別岳のナキウサギで、レッドデータブックにおいて絶滅の恐れのある地域個体群とされ絶滅が危ぶまれています。
また、ナキウサギの生息地が孤立することにより絶滅の恐れが急速に高まることは、中国やアメリカのナキウサギの研究例で知られています。
私たちは、ナキウサギを保護していく上で、ナキウサギを天然記念物に指定することが、もっとも大切で有効であると考えています。しかもある特定の地域だけを指定する、いわゆる「地域」指定では、ナキウサギの保護としては極めて不十分です。ナキウサギそのものを種として天然記念物に指定して北海道の自然遺産として大切にしていきたい、その生息環境も含めて子孫に伝えていきたい、それが国民の強い願いです。
天然記念物への指定は、文部科学大臣の権限であり、ナキウサギは指定の要件は充たされています。文化庁や北海道は、昨年末に地元の意向調査をしましたが、地元の申請や地元の承諾は、指定の要件ではありません。
また、天然記念物に指定された後もその保護にあたっては、国と北海道が責任をもつべきであり、地元の自治体が責任を押し付けられるべきものではありません。
そのことは、現在、ナキウサギにとってもっとも脅威になっているのが、林野庁と北海道が進めている道路建設や野生生物への配慮を欠いた森林施業であることからも明らかです。
ナキウサギの生息地を抱える自治体のみなさまが、常日頃ナキウサギを含む野生生物を大切に考え保護に配慮されてきていることに敬意を表させていただきます。
どうか、エゾナキウサギが国の天然記念物に指定され保護されることに、力をお貸しくださいますようお願いいたします。
このたびは、書面で失礼いたしますが、近く、直接、皆様にお願いに伺う所存でおります。
また、参考資料として要望書、新聞記事のコピーのほか、ナキウサギをより知っていただくための資料も(不要かとは思いましたが念のため)同封させていただきました。
繰り返しになりますが、どうか、エゾナキウサギの天然記念物指定にむけて、今後ともよろしくお願いいたします。
以上
参 考 資 料
1. 要望書 | (2005年11月28日) | 文部科学大臣 宛 |
2. 要望書 | (2006年9月11日) | 北海道知事 宛 |
3. 抗議・要望書 | (2006年9月11日) | 北海道教育委員会 宛 |
4. 質問書 | (2006年9月14日) | 文化庁文化財部記念物課 宛 |
5. 再質問書 | (2006年9月23日) | 文化庁文化財部記念物課 宛 |